こんにちは、事務局ムラセです。既に冬に実施済みの内容ですが、報告ブログに書き起こす作業をしております。しばらく時差投稿が続くと思いますがご容赦ください。
(記入:2025年10月3日)

対馬の山といえば…

霊峰「白嶽」(しらたけ)です。

△二つの峰をもつ双耳峰(そうじほう)ですぐに目につきます。かっこいい。GPSなどがなかった時代、遠くからあの姿が見えるだけでホッとしたといいます。地域のみんなに愛される霊峰です。

△島の真ん中にあるリアス海岸・浅茅湾(あそうわん)側から見ると、トトロのような愛らしい猫耳。かわいい。

愛されている証として、地域の神事には欠かせないお神酒としても馴染み深い酒の名前にもなっています。

△島内シェアは8割を誇り、そのほとんどが島の中で飲まれてしまうため、島外で売られるのはごくわずか!作っているのは、島唯一の酒蔵・創業100年を超える「白嶽酒造」(旧・河内酒造)さんです。

白嶽の今

そんな白嶽が、人知れず荒れてしまっているのをご存知でしょうか?

結構、衝撃的です。なんでこうなったの?と驚きますよね。

荒廃の原因は、様々です。

・鹿が増えたことによる、下層植生の減少。
(土壌を固定している緑を食べつくしちゃう)

・気候変動による大雨や台風の増加
(固定されていない土壌を一気に流水がさらっていっちゃう)

などなど。

そして一番の要因はわれわれ「ひと」です。

山はもともと植物で覆われています。その植物をつたって雨水は分散しながら流れていきます。

しかし、そこを人が歩いていくと緑がなくなり、道ができます。

△白嶽の写真ではないですが、12年ほど前の内山地区の山の様子。緑がいっぱいだ…

登山道ができる代わりに、植物が消失し、そこが水路になり、一気に荒廃していくのです。

じゃあ「人が山に入らなければいい?」

足元に咲く小さな植物にとってはそれが一番いいかもしれません。
しかし、人と山は切っても切れない関係です。

だって日本の国土の66%、約3分の2は山林です。対馬においてはなんと89%!!

古くから人が暮らしてきた集落と、その山の間に広がる環境を里山といいます。
里山とは原生的な自然とは違い、手をかけることで再生し持続している二次的な自然です。人の手が入ることで、様々な種類の植物や動物が生息できる多様な生態系が生まれます。そんな里山がうまく機能しない現状があります。

△絶滅危惧種に指定されている野生のヤマネコ・ツシマヤマネコは、エサが豊富な田んぼにいるので地元の人は「田ネコ」と呼びます。ヤマネコは、まさしく人と自然の共存の象徴。

現代社会では、自然に触れずともネット環境さえあれば、衣食住・学び・娯楽など、さまざまなものを享受できてしまいます。しかし、便利な技術革新の裏には道路を通すための森林伐採、エネルギーの過剰消費による気候変動などの自然破壊があります。自然に対する関心が薄れている今こそ、私たちは自然と積極的に関わっていくべきなのです。

少し話が逸れましたが…
対馬の山は、歴史が深い山・信仰の山・独自の植生が根付く山・ヤマネコが住む山…と非常にその顔触れがユニークです。自然への愛着を深めるだけでなく、様々な学びも多い山です。

ぜひとも多くの方に対馬の山を楽しんでもらいたいけれども、前述のように登山道が荒れています。登山者は多くはないので利用過多が原因ではありませんが、一度人が作った道への管理が、圧倒的に足りていません。国の特別史跡に指定されている金田城跡を有する城山以外は、日々管理する人がいない状態です。

そこで立ち上がったのが、地元のガイドさんたちです。

△2022年・大雪山・山守隊の岡崎さんにお越しいただき行った、白嶽登山道整備の様子

大雪山・山守隊は、どんなに崩れてしまった場所でも「そこにいる生態系の底辺が住める環境を復元させれば、おのずと生態系が出来上がる」という発想(近自然工法)で、全国各地の登山道を直しながら、今の山岳保全の在り方に一石を投じ続けている道なおしの伝道師です。

とにかく道直しのノウハウを学びたい!とお越しいただきましたが、必要な技術・考え方・自然を捉える視点などを培うのには、本腰を入れて学ばねばならない。

また、道直しができる体制(予算・人員の確保など)が確立されていないと持続的ではないという学びがありました。

ということで、時間がかかってしまいましたが、2024年12月に「対馬市エコツーリズム推進協議会」が設立されました。

この協議会は、山に加え、対馬の貴重な地域資源である「浅茅湾」や「ツシマヤマネコ」を含む自然やいきもの、歴史・文化などの価値を、対馬市民が一丸となって再認識し、その資源を守り、後世に伝えていくために、保全しながら適切に活用していくことを柱として、市民・事業者・商工会・農協・漁協等、行政などで構成されている組織です。

役員会とは別に、専門部会を設けており、より現場に近い方々、地域の方々に参加いただきながら具体的な課題を解決できる組織を目指して活動をはじめたところです。

【専門部会】
①ガイド部会
②マリンアクティビティ部会
③トレッキングガイド部会
④ツシマヤマネコガイド部会
⑤地産地消部会
⑥エコツーリズム推進部会

それぞれの部会名にはガイドや、アクティビティなど観光に関する言葉が並んでいるので市民のみなさまには遠い話に聞こえるかもしれませんが、そのフィールドはみなさんが暮らしているまさしく里山・里海だと思います。まだこの活動は始まったばかりで、みなさんがアクセスしやすい環境を整えられておらず、まだ情報発信ができておりませんが、お気軽に地域のみなさまにもご参画いただきたいと思っています。こうご期待です!

さて、そんな専門部会活動のさきがけとして、トレッキングガイド部会にて、2回目の白嶽登山道整備を行いました。今回の目的は、登山道整備をツアー商品化(参加者も巻き込む)できるかの検討を行うことでした。講師としては、大雪山 山守隊の岡崎さんの活動に感銘を受け、登山道整備を新たな山のアクティビティとするべく精力的に山梨県で活動を行う「北杜山守隊」からインタープリターの勝俣さん、技術リーダーの山部さんにお越しいただきました。

白嶽登山道整備研修会

日程:令和7年(2025年)1月17日(金)~19日(日)
場所:美津島町洲藻 白嶽登山道
参加者:トレッキングガイド部会員、市民、事務局スタッフ 計7名
目的:登山道整備の在り方検討会

△あれ、山じゃないじゃん?

△え、ウンチつんつん??もしや…ヤマネコ?

まずはさまざまなスポットを見ていただき広い視点で対馬の魅力を感じていただきました。まだ山に登ってないのに、非常に白熱した議論が巻き起こりました(笑)

△いよいよ白嶽です。次の日に整備体験する場所の選定をしつつ、道が崩れるメカニズムを学びます。

△北杜山守隊の整備ワークショップでは、山頂には行かないそうです。が、白嶽は山頂に行ってこそ伝わるものが詰まっているので、無理を言って登頂(笑)

△次の日。登山口から20分ほどの、2年前の整備地が未完でしたので、ここに決定。使う道具の説明を受けて開始です。

△まずは資材集め。対馬は石だらけ。こんなに資材が近くにある環境は、ズルいのだそうです(笑)

△かつて人が利用していた森。手が入らなくなった人工林。自然の声に耳を傾け、これからどうしていくべきか。

△「えぐれた登山道を元に戻すのが目的ではない」「植生復元を第一に、水の流れを見極めて、人と自然が共存できる道をさぐる」…実は、答えはすぐにはでないのです。雨の日に来てみる。定点観察する。里山と同じ。一度手を入れたのなら、ずっと手を入れて自然と向き合う覚悟が大切。そう思います。

△「石ある対馬ズルい~♪でも、石組み、めちゃムズい~♪(ラップ調で)」

さてさて、ざっと2時間弱の作業にて完成したのがこちら。

△作業中は、何が正解か何度も自然に問うて、悩み、沼にハマり、ゴールが見えず苦しんだり、石を組んで無心になったり、次なにすべきか分からなくなって棒立ちになったり…という時間なのですが(笑)ビフォーアフターで見ると感無量。達成感の極みです。山頂行かなくてもいいんじゃね?っていうぐらいの達成感(おい)

冗談はさておき、本当に1人だったら沼から出られなくなりますが、ここはチーム戦の勝利です。見てください、この笑顔。

重たい木を、手を携えあって動かす時間の尊さ。あーでもない、こーでもないと言いながら、作業することの楽しさ。健気に咲く植物の声に耳を傾ける清清しさ。自分たちの山が治っていく喜び。

普段の山登りにはない、新しい世界がここにはありました。

これから同じ思いで山を愛し守っていく仲間を、島内にも島外にも広く作っていきたいと思っています。山はこうしている今も、どんどん崩れています。いち早く、みんなの手で守っていけように、大雪山・山守隊、そして北杜山守隊のみなさんから頂いた知恵・ご意見を元に活動していきます。

ご協力いただいた皆さま、参加してくださった皆さま、ありがとうございました。
これからの活動に、ぜひみなさんこうご期待&ご参加お待ちしております!